赤道近くの町だから何月かを思い出す手がかりにはならないけれどあれは暑い日だった。
喧嘩してもう半年くらい一緒に遊んでいなかったカトリーナの家に呼ばれた。
恐らく彼女の母と私の母とが気を使ってセッティングしただけで、そこに彼女の意思はなかったと思う。
家に到着した私に気がつくと3メートルほどありそうな大きなガラスの壁の向こうから彼女は私に手を振った。
喧嘩をする前はすごく仲が良かった。
少なくとも私の記憶の中では。
彼女は困ったことがあるとすぐ私に声をかけてきたし、
学校にいる間彼女の笑顔の原因の半分は私だったと思う。
(いつの間に引っ越していたんだろう。)
カトリーナの家へ、と指示したはずの運転手が
かつて私が行き慣れた道とは違うものを通っていた時は寄り道でもするのかと少し苛立ちを覚えたが、
私が何も知らなかっただけだったのだ。
「ハイ」
挨拶どんな言葉を彼女と交わしたらいいのか悩んでいたら、
彼女が最近弟とやっているというコンピューターゲームを点けてくれた。
カエルをゴールまで水草の上を誘導するパズルゲームで、クリアしてもクリアしても延々と続く地獄に救われた。
しばらくすると遠くの方からタガログ語が聞こえてきた。
カトリーナがそれに返す。
彼女は私の手を取り、散歩に行こうと言い出した。
車にも乗らず、私たちは舗装されていない道を歩いた。
彼女は久しぶりに私の腕を組んだ。
しばらくして着いたのは彼女の知り合いの家で、勝手知ったる顔で彼女はドアを開けて入っていった。
中には主人は居らずお手伝いさんしかいなかったが特に気にしていなかった。
居間からはプールが見えた。
彼女が入ろうと誘う。
水着もないし、そもそも私にとっては見知らぬ人の家に勝手に入ってさらにはプールになんて、
とたじろいでいると彼女が徐に服を脱ぎ出した。
下着姿で二人でプールに入った。
水中で笑って手を繋いで抱き合ったりした。
しばらくそうして泳いだ後、濡れた下着の上から服を着、彼女は居間の机の上にあった籠を手に取り家を出た。
一つの腕に籠と私の腕を絡ませながら歩いた。
服を乾かすために少し遠回りしながら彼女の家に向かった。
途中彼女が空いた方の手を籠の中に入れ、何かを掴んで出して食べた。
もう一度籠の中に手を入れ、今度は私の口元に運んだ。
「ラザニア。」
私が今まで食べた中で一番美味しいラザニアだった。
彼女の家に着くまで、私たちはそうして彼女の指からラザニアを食べながら歩いた。
その次の日の学校でも特に彼女とは話すことは無かった。
そのまま私は転校し、日本に帰ってきた。
まずはみじん切りしたニンニクをオリーブオイルと鷹の爪を入れたフライパンに入れて熱します。
ニンニクがいいと言ったらみじん切りした玉ねぎを加え、どっちがニンニクでどっちが玉ねぎかわからない頃合いになってきたらひき肉を入れます。
塩胡椒、ハーブ、白ワインを入れしばらく見張ります。
ひき肉がパラパラになったらトマト缶とトマトペーストを入れ、ローリエを投げ入れたところで蓋をしてハーフタイムです。
細く切った玉ねぎをバターで炒めます。
そこにバターを追いつつ小麦粉をふるい入れながら小麦粉粘土のようなものを作ります。
小麦粉粘土に少しずつ牛乳を加えてき、トロトロにします。
塩で味を整えます。一口食べて美味しいと感じるくらいです。
耐熱皿にバターを塗り、ミートソースとホワイトソース、茹でておいたラザニア生地を順に重ねていきます。
ホワイトソースの番の時に生クリームも追加するとさらに美味しくなります。
お皿いっぱいになったらチーズとパン粉、パセリをかけ、バターをひとかけのせてオーブンで熱してください。
完成です。
よく寝てよく食べます。