水を見たことがないから、
水というものを想像することができなかった
これが水だよ、と教えられたものが
泥だったことに、
その時は気付くこともなく、
濁った泥を手にすくっては、
これが、あの「水」なのか、と
感動したものだった
今は水を知っている
色がなくて
光を通して
するするとしている
触るとしずくが指につく
私が水を知っていることを知らない人は、
未だに泥を水だと信じていると、
笑っているかもしれないが、
私はもうとっくに水のことを知っている
未だに泥を水だと信じている人に、
本当のことを伝えるべきか、
黙っているべきか、
正解はわからない
本当の水のことを教えても、
信じないかもしれない
もう同じ泥を見て、
同じ気持ちで、
「水だ、」「水だね、」と
言うこともできない
それでも水のことを、
知れてよかったと思う
水を見たことがないまま
違和感をおぼえることもなく
一生を終える人もいるんだから

ハミスチー