ソフィーがくれた風船ガムをかんでいる。口から出すタイミングがわからなくて、これで3日目くらいになる。賞味期限はあと半年以上もあって、それくらいの間かんでいられるという意味かどうかをあした聞くつもり。きのうの夜、ソフィーが眠っているとき、頬に涙がこぼれているのを見た。かなしい夢を見ているのかもしれない。わたしたちは眠らないから、夢を見ることもない。目を閉じてしずかに寝息を立てるソフィーはずっとどこか遠くにいるような気がした。わたしもかなしい夢を見てみたい。すべてがめちゃくちゃになって、 取り返しがつかなくなって、この先には絶望しかないという夢。そして、目がさめて、それが現実ではなかったことに心から安堵したい。まだ眠っているソフィーの体温を感じながら、なにもかも大丈夫だったと思いたい。
校閲者として働いたり、文章を書いたりして暮らしています。