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 新幹線の12号車に乗っている。博多から名古屋へ向かうところ。乗車してすぐに眠って、新神戸に着く手前あたりで起きた。トイレに行きたくなって11号車の方に向かう途中で気がついたのだけど、12号車の乗客全員が眠っている。ほんとうに、誇張抜きで、僕以外の全員が眠っている。乗車率、というのかわからないけれども着席率はざっと見たところ40%といった感じで、その39.8%くらいが寝ている。計算があってるかわからない。僕を0.2%と換算しているけどこれはただの感覚です(※)。

 18番から1番まで、通路を挟んでA〜C席とD・E席の乗客全員を見る。ほんとうに全員寝ている。嘘かと思うくらい寝ている。もうトイレとかどうでもよくなって、12号車を一往復した。ほんとうに全員寝ている。冬眠から最初に目覚めたクマってこんな気持ちなのだろうか、と考える。

 むかし『ムーミン』で冬眠の話を観たような気がする。『ムーミン』のオープニング曲が好きで、アウトロのコード進行が絶妙だと子どものころから思っていた。いや、子どものころに「このコード進行絶妙だな」とか思ってたわけじゃないけど。「なんか好きだな」くらいだったけど。話がそれた。『ムーミン』の冬眠の話だ。またすぐ話がそれて申し訳ないけど、申し訳ないって誰に対して申し訳ないなのかわからないけど、とりあえずこれは社交辞令? 社交辞令で合ってる? なんかそういうあれ的なやつで一応「申し訳ない」って書いてるだけで、ほんとうはこれっぽっちも申し訳なさはないけど、少しずつ話を戻して、またすぐ話がそれたの部分に戻ると、「ムーミンの冬眠」って韻を踏んでておもしろいですね。なんかここまで脱線するとおもしろさ半減だな。半減っていうか5分の1くらいになってるな。その、『ムーミン』の冬眠の話を思い出したっていう話をしたかっただけで、とはいえ思い出したっていうかあんまり思い出してなくて、なんかさみしいみたいな話だった気がする、くらいしか覚えていない。そのさみしさを、いま、俺は、新幹線の12号車で感じているよ! みたいなことを、架空のクマに向けてこう、念じるっていうか、飛ばしている。

(※)1〜18番までA〜E席があるので、座席の数は18×5=90席。着席率40%とすると、12号車の乗客は90×0.4=36人。「僕」は36分の1なので、1÷36×100=2.777777…%で、勘にしてはまあまあいいところをついている。