ソフィーが飼っている犬のエルは、わたしのことをはっきりと嫌いだ。代わりに散歩へ連れていくと、家のそばのニュース・スタンドで新聞を買うあいだ、誘拐されたような顔と鳴き声でわたし以外のだれかが助けてくれるのを待っている。ふわふわの茶色い毛を持つエルは、ソフィーいわく雑種なのだという。雑種でも、なんとかとなんとかっていう犬をかけあわせた価値のある雑種だと言っていた。 そのときにわたしが「ふうん、じゃあ、価値のない雑種がいるってこと?」と不満そうに返したのを、エルはしっかりと聞いていたらしい。