fmmzkさんの日記を読んで、ふだんの日々を細かく記してみるのもいいなと思って書いてみる。あけすけに記したから、もしかしたら嫌になってすぐ消してしまうかもしれない。1週間分記録するつもりだったけれどあまりに長くなってしまって、結局「ある一日」のことを載せることにした。
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睡眠の質を計るアプリをずっと続けている。この間追加された睡眠薬をやめていつも飲んでいるだけのものにしてみたらかなりぐっすり眠れて、寝起きもよかった。ここ最近ずっと一日中眠くてしんどかったのはこれが原因だったのかもしれない。初めて飲んだ日にぐらりと視界がゆがむ感じがあって、なんとなく信頼できず、警戒しながら飲んでいたという気持ちの面への作用もあるのかも。
心理学の教科書を開く。はしがきを読んだら「一から読む前に第○章を先に読むのがおすすめ」と書いてあって、罠!と思う。指示通りその章から先に読んだ。やっぱり勉強をすると気持ちがいつもよりずっと軽くなって、少しハイになる。近ごろ勉強の時間がそこまで取れなかったのだけれど、たぶん人の30%くらいしか活動できていないからずっと忙しいように感じているのかもしれない。あと、やりたいことが多すぎるのも理由の一つだと思う。予約の時間になったから診察とカウンセリングへ行く。前述の睡眠薬のことを話す。それ以外はいつもと同じ処方箋を出してもらう。漢方が効いているという話をする。ときどきあった、何かに対する異常なほどの怒りがなくなった。前回のカウンセリングからもうひと月経ったのだということが信じられない気持ち。一番ひどいときよりはだいぶましになって余裕が出てきたからこそ気がついたこ、ということをいくつか話す。ライフステージの変化とともに、周囲のわたしの属性に対する反応みたいなものにいやな気持ちを抱くことが多くなって、自分の個人的なことをあまり明かさなくなったこととか。カテゴライズされたくないと思うのは、わたし自身が無意識にだれかをカテゴライズしているからこそなのかもしれないとか。年を重ねて好き嫌いがあまりにはっきりしてきたことに不安を覚えることとか。いつも話しながら自分の考えを整理しているのだけれど、きょうは気分的にのれずに、「わたしはこのまま話をしていていいんだっけ」と何度も思った。なぜだろう。薬局ではいつも袋はいりませんと言うのだけれど、雨が降っていたし、いつもかばんのなかでぐちゃぐちゃになるので今回はもらうことにした。
帰り道で服用の洗剤、柔軟剤、おしゃれ着用洗剤をまとめて買う。結構な重さになった。ここでも袋をもらう。PayPayは便利。少し前に火事があった店の前にいくつか花束が供えられていた。その先の花屋で同じ包み方の花が売っていて、みんなここで買ったのかな、ここの人もきっと供えたのだろう、と勝手なことを思う。
帰ってから仕事をする。最近なぜか依頼が増えていて、やりとりする人もかなり増えたので、スケジュールに入れない程度の小さなタスクは紙に書き出さないと頭がこんがらがってしまう。これは日頃感じていることなのだけれど、日本人の翻訳者はほかの国の翻訳者と違ってあまりクライアントに質問をしない傾向にあると思う。文脈が不明で当てずっぽうに訳されたものは結局校正者がクライアントにあらためて確認することなるから、時間もかかるし、もっと積極的に聞いてもらいたい、という強めの念を翻訳者に送る。案件に対するフィードバックは日頃送っているのだけれど、これはあくまで全体に向けた心の中での念。
そのままべつの仕事に取りかかる。納品後かなりもっともな指摘があって、なるほどなと思う。久しぶりにこういう注意を受けて一瞬うろたえかけたけれど、言ってもらえてよかった。たぶん自分で気がつくのはもっとあとになっただろうから。その仕事を終えてまたさらにべつの仕事に。いろんな人がいろんな依頼を送ってくれるからまた頭がこんがらがり、なぜか間違って割り当てられていた翻訳を進めてしまう。それについて連絡したら「むしろやってくれるか?」と返ってきたから明日はそれをやることにする。もともと校正として受けていた案件だったから、校正と翻訳の報酬の差に単純におどろく。ラッキー。
仕事を終えたあと、同居人が「カリブの海賊」の歌を歌っているのが聞こえてきて、どこからその曲が降ってきたのか尋ねたら東京ディズニーランドのアトラクションでかかる音楽を集めたアルバムがあると教えてくれた。台詞とかも全部入っていておもしろい。これを聴きながら目をつむって情景を思い出したら行っている気分になるかもしれない。プーさんのハニーハントとかもあった。そもそもアルバムのタイトルが「MUSIC ALBUM」なのがいい。怖くて乗れないやつとかのも聴いてみたい。こういう会話をしているうちに仕事モードになっていた頭がゆるやかに切り替わっていって、一人だったらこうはいっていない、とありがたい気持ちになる。
お風呂に入り、眠る準備をする。同居人の足がかなり冷たそうで、しかも色が変になっていたから棒を持ってきて足つぼのマッサージをした。手でやるときの親指の力の入れ方がわかってきたような気がする。かなり痛い部分があるらしい。なにがどうつながっているのか知りたくなって、そのままAmazonで適当な本を選んで買った。綴じ方に工夫があって、本がちゃんと開くというものにした。しばらく続けていたら足もまともな色にもどってよかった。日をまたいだような時間に買って、寝て起きたらもう届くというのだから、助かるけれど、なんだかおそろしい。
薬を飲んでベッドに入るともう冬の冷たさだった。いやだいやだと嘆いていたら、「おれはそのうち温かくなることを知っているから、この冷たさはいやじゃない」と突然詩的なことを言われる。しばらくスマートフォンをながめていたけれど、目をつむったらすんなりと眠れた。夢とうつつのあいだの瞬間、一番ひどいときよりはいろんなことがましになっている、とやっぱり思う。
校閲者として働いたり、文章を書いたりして暮らしています。